映画(3)

無錫の夏は厳しいと聞かされていた。しかし去年も今年も雨が多く拍子抜けだ。ここ二週間は雨ばかりで薄ら寒い。。◉雨降りの日に、母親がよく「 巷に雨の降るごとくわが心にも“雨ぞ降る”」と口にした。ヴェルレーヌの詩。訳は堀口大學で、終わりのフレーズは“涙ふる”が正しい。たった今、Wikipediaで調べました。母が間違って憶えたのは、たぶん『雨ぞ降る』(1939)という映画とこんぐらかったからだ。素晴らしい文語のタイトル、こんなの今はもう無い。◉私は長い事ジョーン・クロフォードの映画だと思っていた。が、大間違い。淀川長治先生に引っ叩かれる。クロフォードのは『雨』(1932)で、さらに古い。原作はサマセット・モーム。◉『雨ぞ降る』の主演女優はマーナ・ロイ。原作はルイス・ブロムフィールドの『雨季来たる』。後にラナ・ターナーでもリメイクされて、邦題は『雨のランチプール』(1955)。◉ややこしい事(私にとってですが)に『雨』の方もリタ・ヘイワース主演でリメイクされた。邦題は『雨に濡れた欲情』(1953年)。4本とも未見なので混乱する。最新作でも五十年以上前とは言え、映画好きとしては悔しい。◉何とかテレビの深夜映画でみる事が出来たのが『雨を降らす男』(1956)主演はキャサリン・ヘプバーンバート・ランカスター。ヘプバーンの愚鈍な弟が、雨を呼ぶ為に太鼓を打ち続けるシーンが、母のお気に入りだった。