映画(10)『鳥』

2017年5月13日、土曜、雨。◉録画、ヒッチコックの『鳥』を見る。タイトルの直後、最初のカットで女性が画面右から左へ交差点を渡る。カメラが左へパンして女性を追う。左手から看板(みたいなもの)がフレームインして彼女は一瞬見えなくなる。看板が右に切れていくと女性はその左側から現れる。ペットショップ前の歩道だ。彼女はそのまま店に入っていく。◉思わず巻き戻して確認した。交差点は市街地ロケだ。しかしペットショップ前はスタジオセットだ。影が違うもん、絶対そーだ。ただ構図やパン速度、演技者の歩調が自然でちょっと気づかない。◉つまり看板(上下いっぱいに映る)を利用して、ワンショットのように合成で繋いだのだ。看板の右か左が合成の繋ぎ目のはずだが全然分からない。ただそう考えないと、開巻早々看板が画面を分断する理由がないです。◉視覚的インパクトが第一の映画だが、歳を経てから見ると、主人公の男女、男の母親、小学校の女教師、四人の関係描写に惹かれる。母親のキャラは極めて現代的。とくに、寂れたボデガ湾で美貌を窶していった先生(スザンヌ・プレシェット)に大いに感情移入する。◉そのほか。農夫の家から逃げ去るトラックの立てる猛烈な砂埃、一刻も早くここを抜け出したい気持ちの表現。高空から捉えたボデガ湾のショット。CG以前どこにカメラをセットしたのか。夥しい数の鳥が待つロングショット、雲間から挿す光、この世の終わり。