閃輝暗点(せんきあんてん)

月曜の朝、久しぶりに閃輝暗点の症状が出た。会社の廊下から窓を見ていたら、右の視野の真ん中近くが小さく楕円形に欠損していた。それは次第に光のギザギザ模様に変形し、プリズムの縁を見るような虹色に輝きながら、緩やかに弧を描いて視界に広がっていった。いつもの事だが暫くすると消えた。◉それは眼を閉じていても見える。だから頭の何処かに異常が起きているな、と素人でも分かる。最初に経験したのは、確か二十代の終わり頃、デニーズで夜、友人と一緒の時だった。冷静を装ったが内心は相当恐ろしかった。◉今でこそウィキペディアにも紹介があるけれど、当時はそんな情報はぜんぜん無かった。自分が想像したのは脳腫瘍である。コワイよこれは。◉その場にいた理系の友人が「とにかく視神経がなにか興奮してるんだな」と言ったのでそれを採用した。いきなり脳病を疑うより、段階を踏んだほうが体に良い。◉症状は連続しなかったので、結局そのまま放置した。医者に行く事自体オソロシイので。だから今でも本当の原因は分かっていない。◉何年も経ってから、芥川龍之介に関するテレビ番組で、この症状が閃輝暗点と呼ばれる事を知った。芥川の持病だったらしい。あの作家に相応わしいと思った。◉片頭痛の前兆として起きる事が多いらしいが、僕の場合は連動しない。だから少し気楽なのだ。ただ最近耳鳴りが大きくなった。◉耳鳴りについては先日NHKでその原因を知ったばかり。ある周波数帯の聞こえが悪くなった時に、脳が聴覚神経の感度ボリュームを上げてしまい、静かな時には脳内の電気信号を拾ってノイズを作っていると言うもの。ああだから耳塞いでもダメなのね。