本『細雪』

2017年5月28日、日曜、快晴。◉『細雪』(文庫上中下三巻)を読み終える。まず読みや易い。文体は全く抵抗なくスラスラ頭に入った。関西弁の会話がとてもリアル。漢字と仮名遣いが新しくなっているのが助かった。文字も大きい。若い頃買った早川ノベルスなんか今はとても読めない。◉一月で読めたのだから、たぶん面白かったんだと思う。大阪にお金持ち(没落したとは言え)の美人四人姉妹がいて、上の二人は嫁いだが、三女は陰気で見合いに失敗し、四女は勝手気儘でスキャンダルが多く、両方とも片付かないので困っている。という話。◉第二世界大戦末の初老の作家の作品。ディティールの集積が凄い。着物の事とか芸事とかとにかく細かい。特に中心となる次女(幸子)の心の内の記述が、いかにも女らしく感じられる。また実際の店や製品もどんどん書く。スティーブン・キングみたい。◉面白いのは、沢山の病気が出てくる事。黄疸、中耳炎、猩紅熱、赤痢。わずか数年のお話で、登場人物にそんなに罹患させたら、今じゃ返って嘘っぽい。けど、昔はよく病気したらしい。何人も兄弟がいた戦前の家では、大抵一人くらいは幼いうちに病気で死ぬ子がいた。◉漫才師の花菱アチャコは中耳炎で死にかけたと読んだ事がある。中耳炎は死に至る怖い病気だった。お袋はジフテリアに二度かかり、二度目は医者に見放されたらしい。お婆ちゃんがすりおろした大蒜の汁を喉に垂らして助かったと聞いた。