映画(8)『インターステラー』

2016年6月26日、日曜、晴れ。◉朝起きて、朦朧としたまま『インターステラー』を途中から観る。もうすでに何度目かの断片視聴。好きです私。休日の午前中に違和感のないSF映画。しかし実はメチャ壮大、かつ正真正銘のハード作。ブラックホールウラシマ効果なSFである。◉骨の髄まで文系なので、科学的考証の正確さはよく分からん。だがワームホールの視覚表現など、すげえ納得行くものであった。逆に大気圏内を飛行する宇宙船は、あれで揚力が作り出せるだろうか。水ばかりの惑星の混乱は石原藤夫の『ハイウェイ惑星』を思い出した。◉そういう内容なのだが、全体には何だがしっとりと叙情溢れる作品なのだ。広大なトウモロコシ畑、本棚の幽霊、砂埃の農家。遠い星へ旅する父親と娘の別れ。道具立てがブラッドベリだと思う。昔、あすなひろしのマンガで、宇宙飛行士が年老いた恋人の元へ光になって帰るのがあり、雰囲気が似ていた。◉娘を演じたマッケンジー・フォイが良い。成長後を演じたジェシカ・チャスティンもぴったりで、木下恵介の『二十四の瞳』と同じくらい上手くいっている。ジェシカさんは『オデッセイ』(火星の人)にも出ており、科学者女優である。マシュー・マコノヒー主演で『コンタクト』との共通点も感じたが、ウィキぺディアの記述にカール・セーガンの名も見られて驚いた。 ◉パイプオルガン(少なくとも音色)の音楽が荘重で高潔そして運命的で美しい。

同僚(3)

2016年6月17日、金曜、曇り。◉退勤時刻に、隣の日本人同僚は無言で部屋を出る。バスにも先に乗っている。アパートに着くと、彼は煙草を吸いながらブラブラ歩く。僕は普通に入口に向かうので自然と距離が開く。しばらくロビーにいても来ないから、僕は一人でエレベーターに乗る。◉水曜の帰り、日本食街に行くか聞いた。行こうかと言うので、久々に一緒に食事をした。店は何処でもいいと言うので僕が決めた。二人とも定食なので、六時過ぎには食べ終わった。勘定しようかと言うと、まだ早すぎると言う。◉っんなら最初に言えよぉ。二軒目に行くなら、定食じゃ絶対時間が余るじゃん。もちろん二軒目誘ってくれたが、行かねえよ俺は。一月からやってるアレが片付くまで、絶対イヤ。まあ彼も行くと思ってないわな。半分は社交辞令か。◉駐在する日本人同士のコミュニケーションがうまく行かんのはよくある。嫁と姑がうまく行かないのと同じで、枠組みの方が先行して、結果として一緒にやってるだけなので 、仲良くなる方が稀だろう。相手はお前から情報が来ないと言う。俺は、だったら聞いて来いと思う。少なくとも普段口をきけと思う。そんな風で、会話はさらに減る。◉ある得意先で、同席した総経理が僕に話す内容と、製造責任者が僕に話す内容が、ほぼ全く別々であった。発言は交互だが、僕は関係のない二つの話題に受け答えした。お二人の心の離反の様子は、立派でさえありました。

友達

2016年6月9日、木曜、曇り、端午節のお休み。◉数日前「kabochan-rosenさんがあなたのメール(2)に⭐️をつけました」と通知をもらう。スターっ、人生初。うれしいから彼女(まあ名前から予想)の『一言でいえばブログ』に出かける。◉僕のことを「なんという偶然、大学時代の友達だ」とあった。ホントそれ?ホント偶然?だったらかなり感動だぜぃ。さて、ダンナさんがいるようだし、同性婚ではないと仮定して、彼女は何を以て僕をヒットした?推理のひとつは「booton」のハンドル名。前世紀から変えていない。それと記事の内容からだろう。◉あなたは誰ですか。まだ開始から間も無いシンプルなブログ。だけど中国では正しく全部を表示しない。予想が当たっていれば、元は結構パワフルなネットユーザーのはずだ。◉手掛かりとしては記事の短かさ。内容ではバッハの無伴奏チェロ組曲かな。けど、そもそも大学時代の友達と呼べる女性は、僕には二人しかいない。だから分かるよ。昔レイモンド・カーヴァーの短編集の事を書いたとき、『大聖堂』が大好きなんだっ!てなコメント(いやメールだったか)送ってきた君です。◉お元気そうでなによりです。友達と呼ばれるのは嬉しいです。当時を調べたくてデータを探ったよ。2000年頃はまだ自力でホームページをアップしてたんだよね。あの頃の未来に、僕らは立っているのかな。友よ、いつか日本のどこかで必ず会おう。

映画(7)『レ・ミゼラブル』

2016年6月4日、土曜、曇り◉テレビで『レ・ミゼラブル』(トム・フーパー、2012)を観る。すげえ立派な音楽劇。美術も凄い。似たような趣向では、以前『オペラ座の怪人』(ジョエル・シュマッカー、2004)を映画館で観たが立派とは思わなかった。演出と役者の差かな◉昔は『ああ無情』と言いました。俺は高校の頃、上下二巻の単行本ギャグ漫画化作品(みなもと太郎先生)で読み、その神髄を理解した。ミリエル司教がジャン・バルジャンに銀の燭台を与え、その罪を許す。今書きながら思い出すだけでも涙が出る。人間はそうした事ができるのだ(注:現代中国人を除く)。この辺り、映画は意外にあっさりで、バルジャンがひとり再生を誓って力唱する◉その後、宿命の追跡者ジャベール警視との再会までかなり短時間だ。このラッセル・クロウが実に堂々とした体格で、昔だったら主人公はこっちのイメージじゃないかな◉髪を売ったフォンテーヌ(アン・ハサウェイ)が自分の身の上を歌うナンバーが、この映画に風格を与えたと思う。散切り頭の女優をバストショットのみで、歌い始めから終わりまでワンカット。被写体は右に寄り、左は黒っぽく空いたまま。カッコいいぜ彼女◉ミュージカルだけどダンスは無い。ましてやタップなんぞ出る隙も無い。たまたま同じ週に観たフレッド・アステアの『トップ・ハット』(1935)とは全然違う。なんかもう立派過ぎて、オペラと変わらんよね。

メール(2)

2016年5月28日、土曜、霧のち曇り時々小雨。◉案件が長引いて関係者が増え、その仕事に関するメールは「情報は共有しましょう」の観点から、CCの宛先が膨らんでいる。今週、お客に向けたメールに予定表を添付したら、CCで送った本社が出張者の人選を始めてしまい問題となった。◉予定表を作り直すのはもう5度目くらいだ。まず僕が日程を提示してお客に都合を聞く。だから当然修正はある。しかし本社はこれでフィックスだと判断した。確かに“案”とかは書いてない。自分には普通のやり方でも他部署には分からない。結果的にミスリードになった。◉だいたいCCってどうなんでしょアレは。「知っといてもらった方が良いっす」「けど、本来の宛先じゃないんでスルーもありっす」くらいの話ではないか。(本気で伝えたきゃ、最初から宛先にするよね)◉かつまた「あんたは宛て先じゃないんだから、このメールでアクション起こされても、僕としちゃ責任はちょっと…。ネ」「ま、判断はお任せします」と言う雰囲気もある。他所様とのやりとりを公然とリークしてる状態で、聞こえよがしと言うか、これ見よがしと言うか、本当はあまり感心せんぞ。◉さらにBCCに至っては「俺、こんなメールであいつと話つけるんだけど、あんたにだけは教えとくから…。追ってまたちょっと手を借りたいのよね。そこらへん理解よろしく頼むわ」けだし陰湿である。ところが僕よく使うんですコレ。最低!

音楽(4)冨田勲2

2016年5月15日、日曜、雨。◉記憶だけで書いた冨田勲についてネットをあたる。番組名や作品名は大体当たっていた。ただ『油断』は音楽担当自体が分からない。タイトルバックに『砂塵』と言う曲(番組のオリジナルではない)が使われたと思う。ところがウィキペディア冨田勲の項目でも出てこない。かなりヤバいです。◉『きょうの(“お”は無いのが正しい)料理』で、打楽器奏者しか使えなかったのは事実らしい。しかし外人や名人のエピソードは不明。自分の思い込みの可能性が大きい。◉ホルストの件は、合法的に編曲できる理屈がつけられたのが真相らしい。平原綾香作品の時点では、著作権は失効していた模様。◉『夜叉ヶ池』はシンセのクラシック曲を使ったので、作曲作品とは言えないだろう。正直に言えば、シンセサイザーの編曲作品が有名になったあと、自分にはあまり仕事が思い出せない。『風の又三郎ーガラスのマント』(1989)は劇場でも見たし、CDも持っているが、内容的には物足りなかった。メロディラインが弱くなった気がした。◉ここしばらく自分にフィットする作品がなかった。それでも初音ミクとのコラボだって、テレビの特番でフォローしていた。だけどやっぱりピンと来なかった。でもねとにかく昔、冨田勲は抜群にカッコよかったんだよ。『マイティジャック』のエレベーターが地下基地へ降りる時の曲。それがもう一度聴きたくて、俺はLP買ったんだもん。

音楽(3)冨田勲

2016年5月13日、金曜、曇り。◉全部記憶だけで書く。あなたの音楽に、本当に世話になりました。父も母も『新日本紀行』が好きだった。死ぬほど日本的なのに野暮ったくない。だけどオーケストレーションが複雑で口ずさめない。『昼の憩い』とはそこが違うのです。最初に聞いたのは『きょうのお料理』だよなあ多分。来日中のシロフォン名人を急きょ登用した一曲。◉NHKで思い出すのは『宇宙人ピピ』『新平家物語』『勝海舟』『空中都市008』。民放では『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『ビッグX』『オスパー』『バンパイヤ』『どろろ』『マイティジャック』『恐怖劇場アンバランス』『油断』◉『リボンの騎士』のイントロ、ピアノの残響は電気処理してるのでは。『マイティジャック』は今もネットで人気が高い。「伊福部昭は空間を圧縮し(海底軍艦)冨田は解放する」学生のとき、有吉先輩から聞いた名言。◉劇場では東映動画の『シンドバッドの冒険』『ガリバーの宇宙旅行虫プロの『千一夜物語』『クレオパトラ』ずっと後に『夜叉ヶ池』『風の又三郎 ・ガラスのマント』。とにかく稀代のメロディメーカーである。別けても『ジャングル大帝』は偉大で、ジャパニメーションの音楽の位置を決定づけたと思う。◉シンセでは『惑星』を持っていた。絶対に編曲を許さなかったホルストの遺族を、トミタは世界で初めて口説き落とした。平原綾香の名曲も冨田勲なしには存在しない。