映画(7)『レ・ミゼラブル』

2016年6月4日、土曜、曇り◉テレビで『レ・ミゼラブル』(トム・フーパー、2012)を観る。すげえ立派な音楽劇。美術も凄い。似たような趣向では、以前『オペラ座の怪人』(ジョエル・シュマッカー、2004)を映画館で観たが立派とは思わなかった。演出と役者の差かな◉昔は『ああ無情』と言いました。俺は高校の頃、上下二巻の単行本ギャグ漫画化作品(みなもと太郎先生)で読み、その神髄を理解した。ミリエル司教がジャン・バルジャンに銀の燭台を与え、その罪を許す。今書きながら思い出すだけでも涙が出る。人間はそうした事ができるのだ(注:現代中国人を除く)。この辺り、映画は意外にあっさりで、バルジャンがひとり再生を誓って力唱する◉その後、宿命の追跡者ジャベール警視との再会までかなり短時間だ。このラッセル・クロウが実に堂々とした体格で、昔だったら主人公はこっちのイメージじゃないかな◉髪を売ったフォンテーヌ(アン・ハサウェイ)が自分の身の上を歌うナンバーが、この映画に風格を与えたと思う。散切り頭の女優をバストショットのみで、歌い始めから終わりまでワンカット。被写体は右に寄り、左は黒っぽく空いたまま。カッコいいぜ彼女◉ミュージカルだけどダンスは無い。ましてやタップなんぞ出る隙も無い。たまたま同じ週に観たフレッド・アステアの『トップ・ハット』(1935)とは全然違う。なんかもう立派過ぎて、オペラと変わらんよね。

メール(2)

2016年5月28日、土曜、霧のち曇り時々小雨。◉案件が長引いて関係者が増え、その仕事に関するメールは「情報は共有しましょう」の観点から、CCの宛先が膨らんでいる。今週、お客に向けたメールに予定表を添付したら、CCで送った本社が出張者の人選を始めてしまい問題となった。◉予定表を作り直すのはもう5度目くらいだ。まず僕が日程を提示してお客に都合を聞く。だから当然修正はある。しかし本社はこれでフィックスだと判断した。確かに“案”とかは書いてない。自分には普通のやり方でも他部署には分からない。結果的にミスリードになった。◉だいたいCCってどうなんでしょアレは。「知っといてもらった方が良いっす」「けど、本来の宛先じゃないんでスルーもありっす」くらいの話ではないか。(本気で伝えたきゃ、最初から宛先にするよね)◉かつまた「あんたは宛て先じゃないんだから、このメールでアクション起こされても、僕としちゃ責任はちょっと…。ネ」「ま、判断はお任せします」と言う雰囲気もある。他所様とのやりとりを公然とリークしてる状態で、聞こえよがしと言うか、これ見よがしと言うか、本当はあまり感心せんぞ。◉さらにBCCに至っては「俺、こんなメールであいつと話つけるんだけど、あんたにだけは教えとくから…。追ってまたちょっと手を借りたいのよね。そこらへん理解よろしく頼むわ」けだし陰湿である。ところが僕よく使うんですコレ。最低!

音楽(4)冨田勲2

2016年5月15日、日曜、雨。◉記憶だけで書いた冨田勲についてネットをあたる。番組名や作品名は大体当たっていた。ただ『油断』は音楽担当自体が分からない。タイトルバックに『砂塵』と言う曲(番組のオリジナルではない)が使われたと思う。ところがウィキペディア冨田勲の項目でも出てこない。かなりヤバいです。◉『きょうの(“お”は無いのが正しい)料理』で、打楽器奏者しか使えなかったのは事実らしい。しかし外人や名人のエピソードは不明。自分の思い込みの可能性が大きい。◉ホルストの件は、合法的に編曲できる理屈がつけられたのが真相らしい。平原綾香作品の時点では、著作権は失効していた模様。◉『夜叉ヶ池』はシンセのクラシック曲を使ったので、作曲作品とは言えないだろう。正直に言えば、シンセサイザーの編曲作品が有名になったあと、自分にはあまり仕事が思い出せない。『風の又三郎ーガラスのマント』(1989)は劇場でも見たし、CDも持っているが、内容的には物足りなかった。メロディラインが弱くなった気がした。◉ここしばらく自分にフィットする作品がなかった。それでも初音ミクとのコラボだって、テレビの特番でフォローしていた。だけどやっぱりピンと来なかった。でもねとにかく昔、冨田勲は抜群にカッコよかったんだよ。『マイティジャック』のエレベーターが地下基地へ降りる時の曲。それがもう一度聴きたくて、俺はLP買ったんだもん。

音楽(3)冨田勲

2016年5月13日、金曜、曇り。◉全部記憶だけで書く。あなたの音楽に、本当に世話になりました。父も母も『新日本紀行』が好きだった。死ぬほど日本的なのに野暮ったくない。だけどオーケストレーションが複雑で口ずさめない。『昼の憩い』とはそこが違うのです。最初に聞いたのは『きょうのお料理』だよなあ多分。来日中のシロフォン名人を急きょ登用した一曲。◉NHKで思い出すのは『宇宙人ピピ』『新平家物語』『勝海舟』『空中都市008』。民放では『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『ビッグX』『オスパー』『バンパイヤ』『どろろ』『マイティジャック』『恐怖劇場アンバランス』『油断』◉『リボンの騎士』のイントロ、ピアノの残響は電気処理してるのでは。『マイティジャック』は今もネットで人気が高い。「伊福部昭は空間を圧縮し(海底軍艦)冨田は解放する」学生のとき、有吉先輩から聞いた名言。◉劇場では東映動画の『シンドバッドの冒険』『ガリバーの宇宙旅行虫プロの『千一夜物語』『クレオパトラ』ずっと後に『夜叉ヶ池』『風の又三郎 ・ガラスのマント』。とにかく稀代のメロディメーカーである。別けても『ジャングル大帝』は偉大で、ジャパニメーションの音楽の位置を決定づけたと思う。◉シンセでは『惑星』を持っていた。絶対に編曲を許さなかったホルストの遺族を、トミタは世界で初めて口説き落とした。平原綾香の名曲も冨田勲なしには存在しない。

ソリューション

2016年5月7日、土曜、曇り。◉残業が三日続いた。昨日の帰りは夜十時だ。中国に来て二年四ヶ月で初めての事態。原因は試作が上手く行かないからで、製造側の問題である。僕はやる事がないから工場内をクマみたいに歩き回っていた。ただ立っていると疲れる。◉先週から毎日、午後は現場に行き、三時以降は機械に付き添っていた。完璧な完成見本を渡してあるので、行かなくても作業はできる。だがそのプロダクツの販売責任者は僕なので、当然クオリティをチェックしたい。途中で意見も言いたい。しかし作業者に話しかけても、まともに返事がない。或いは上の空。◉「邪魔だからあっちに行っててくれ」でもない。という事は、結果的に俺なんか全然ムシの状態である。(めっちゃ追い込まれているんです。明日朝持って飛ぶんです)気持は分かるがマズいよこれは。パレットを準備したりしていたがアホらしいのでやめた。逆効果かも知れん。要望も無いし。◉ここ数日は日本人が一人で機械を動かしている。最悪だ。なんでそうなっちゃうかなあ。難航しはじめてから、何人も日本人スタッフが支援に来た。日本流ソリューションに対して、中国人はだんだん遠ざかってしまった。「もいっす、日本人同士でトコトンやって解決して欲しいっす」という雰囲気。◉俺は手を貸せない。スタッフを巻き込まないで、一人で頑張って上手くいかなかったら『あの人は無能』って日中両国から言われちゃうんだよ。

リライト

2016年4月30日、土曜、晴れ。◉先週のブログを大幅に書き直す。口調がエラそう。自分と物事との関係がテーマなので、基本的に「コウ思イマス」の部分がある。しかし、何様だこいつ。途中で話題を変化させるのも卑しい。書いてる最中は気づかないんだよ。リライトに四時間くらい費やし再アップした。まあ自己満足ですが。◉『コトガラと私』は、中国で正気を保つための作業なので、まず週一回書くのが目標なのだ。誤字脱字の修正を含め、公開してから頻繁に手直ししている。形式の手本としたのは『天声人語』である。字数はしばらく試行錯誤して、句読点鉤括弧までベタ数えできっちり600字、に決めた。アプリが自動で勘定してくれる。◉意外な事に、文章のチェックやリライトを、上司から依頼される事が結構ある。文章を短いセンテンスに仕立てる傾向が強いので、報告書向きなのだろう。予定調和型というか、枠にどう収めるかに専心するタイプで、クリエイティビティは低い。◉かつて仕事で永六輔さんに文章をお願いしたことがある。初校訂正が戻ってきて仰天した。もう真っ赤っかである。写植のミスとか、原稿との照合とかのレベルではない。誌面の半分以上は訂正されて、だいたい文章の内容自体が変更されていた。◉という事は、ご本人自身の朱書きに違いない。媒体全体の様子を見て、文章を決定するらしい。コレはかなわん、と思うと同時にカッコいい。訂正紙は保存すべきでした。

連続テレビ小説

2016年4月23日、土曜、雨。◉BSプレミアムで『とと姉ちゃん』(高視聴率)第三週分を連続して見る。今週から、材木屋の大地真央と、仕出屋の秋野暢子が登場して、設定が強化された。宝塚月組の男役トップと、関西学生演劇の伝説(と聞いたと思います)が、生粋の江戸っ子役を競う。◉この配役はNHK大阪で逆パターンをやっても意味がなく、半年持ち回り制作の、NHK東京の対抗意識を感じる。もっとも二人の経歴はまだ不明だ。じつは両方ともコテコテの浪速女で、東京に嫁いで来てからは、語るに語れぬ苦労の連続であった…の可能性もある。◉物語の原動力は、例の父との約束である。普通の女の子が、子供心に自ら課した「父性」でもって状況を切り開く。そのポリシーは「日常を守り抜く」という、誠に現実に立脚した心情で、考えようではタフである。このテーマ設定は直接題名になっており、そうした構造を持つことは、時に傑作の条件だ。◉昔『サザエさんうちあけ話』を元にした『マー姉ちゃん』というのがあった。今回の家族構成も、予定されている物語の着地点もよく似ている。当時は何と言っても次女長谷川町子役の田中裕子が光り、主役の熊谷真実は少し損した。だから高畑充希よ、ガンバ!◉なお母親役で稀代の薄幸女優、木村多江さんについては『白い巨塔』(2003)以来のファンだ。『美の壺』のナレーションも贔屓にしている。運命に最大限翻弄される姿を期待する。