ソリューション

2016年5月7日、土曜、曇り。◉残業が三日続いた。昨日の帰りは夜十時だ。中国に来て二年四ヶ月で初めての事態。原因は試作が上手く行かないからで、製造側の問題である。僕はやる事がないから工場内をクマみたいに歩き回っていた。ただ立っていると疲れる。◉先週から毎日、午後は現場に行き、三時以降は機械に付き添っていた。完璧な完成見本を渡してあるので、行かなくても作業はできる。だがそのプロダクツの販売責任者は僕なので、当然クオリティをチェックしたい。途中で意見も言いたい。しかし作業者に話しかけても、まともに返事がない。或いは上の空。◉「邪魔だからあっちに行っててくれ」でもない。という事は、結果的に俺なんか全然ムシの状態である。(めっちゃ追い込まれているんです。明日朝持って飛ぶんです)気持は分かるがマズいよこれは。パレットを準備したりしていたがアホらしいのでやめた。逆効果かも知れん。要望も無いし。◉ここ数日は日本人が一人で機械を動かしている。最悪だ。なんでそうなっちゃうかなあ。難航しはじめてから、何人も日本人スタッフが支援に来た。日本流ソリューションに対して、中国人はだんだん遠ざかってしまった。「もいっす、日本人同士でトコトンやって解決して欲しいっす」という雰囲気。◉俺は手を貸せない。スタッフを巻き込まないで、一人で頑張って上手くいかなかったら『あの人は無能』って日中両国から言われちゃうんだよ。

リライト

2016年4月30日、土曜、晴れ。◉先週のブログを大幅に書き直す。口調がエラそう。自分と物事との関係がテーマなので、基本的に「コウ思イマス」の部分がある。しかし、何様だこいつ。途中で話題を変化させるのも卑しい。書いてる最中は気づかないんだよ。リライトに四時間くらい費やし再アップした。まあ自己満足ですが。◉『コトガラと私』は、中国で正気を保つための作業なので、まず週一回書くのが目標なのだ。誤字脱字の修正を含め、公開してから頻繁に手直ししている。形式の手本としたのは『天声人語』である。字数はしばらく試行錯誤して、句読点鉤括弧までベタ数えできっちり600字、に決めた。アプリが自動で勘定してくれる。◉意外な事に、文章のチェックやリライトを、上司から依頼される事が結構ある。文章を短いセンテンスに仕立てる傾向が強いので、報告書向きなのだろう。予定調和型というか、枠にどう収めるかに専心するタイプで、クリエイティビティは低い。◉かつて仕事で永六輔さんに文章をお願いしたことがある。初校訂正が戻ってきて仰天した。もう真っ赤っかである。写植のミスとか、原稿との照合とかのレベルではない。誌面の半分以上は訂正されて、だいたい文章の内容自体が変更されていた。◉という事は、ご本人自身の朱書きに違いない。媒体全体の様子を見て、文章を決定するらしい。コレはかなわん、と思うと同時にカッコいい。訂正紙は保存すべきでした。

連続テレビ小説

2016年4月23日、土曜、雨。◉BSプレミアムで『とと姉ちゃん』(高視聴率)第三週分を連続して見る。今週から、材木屋の大地真央と、仕出屋の秋野暢子が登場して、設定が強化された。宝塚月組の男役トップと、関西学生演劇の伝説(と聞いたと思います)が、生粋の江戸っ子役を競う。◉この配役はNHK大阪で逆パターンをやっても意味がなく、半年持ち回り制作の、NHK東京の対抗意識を感じる。もっとも二人の経歴はまだ不明だ。じつは両方ともコテコテの浪速女で、東京に嫁いで来てからは、語るに語れぬ苦労の連続であった…の可能性もある。◉物語の原動力は、例の父との約束である。普通の女の子が、子供心に自ら課した「父性」でもって状況を切り開く。そのポリシーは「日常を守り抜く」という、誠に現実に立脚した心情で、考えようではタフである。このテーマ設定は直接題名になっており、そうした構造を持つことは、時に傑作の条件だ。◉昔『サザエさんうちあけ話』を元にした『マー姉ちゃん』というのがあった。今回の家族構成も、予定されている物語の着地点もよく似ている。当時は何と言っても次女長谷川町子役の田中裕子が光り、主役の熊谷真実は少し損した。だから高畑充希よ、ガンバ!◉なお母親役で稀代の薄幸女優、木村多江さんについては『白い巨塔』(2003)以来のファンだ。『美の壺』のナレーションも贔屓にしている。運命に最大限翻弄される姿を期待する。

地震

2016年4月16日、土曜、雨、風強し。◉朝からほぼ丸一日、テレビで九州の地震のニュースを見ていた。今日の無錫は悪天候で、雨が吹きつけ、風がゴウゴウと鳴り、ドアがガタガタと音を立てる。ロクでもない週末。◉昨日の夜KTVで、おとといの震度7地震を話題にした。日本に行って地震にあった女の子は、本当に怖かったと言った。その後アパートに帰って寝てるうちに、それよもデカいのが起きるとは思わなかった。◉亡くなった人がもちろん一番気の毒だが、熊本城の様子も酷い。NHKは『ブラタモリ』で取り上げておいて良かった。昨日も今日も疲れた顔の安倍総理を見る。とりあえず川内原発が壊れなくてホッとした。5月の伊勢志摩サミットの開催中でなくてホント助かった。そう思ってるだろう。そう言えば、菅直人さんはどんな気持ちで首相を見てるでしょうか。◉だけど焦る。この大災害が景気に冷水を浴びせるのは間違いない。まず直近ではGWに別府や湯布院が使えない。その後インフラの復旧と、被災者の保護と、復興支援に途方も無いお金と時間がかかる。中国との事で言えば、九州は中国人が大勢詰めかける場所である。これだけ地震が連発すると、一気に客足が途絶えるかも知れない。◉返す返すも日本は地震国である。僕は『日本沈没』と『ノストラダムスの大予言』で育った終末論世代である。五年に一回こんな大地震が起きる国で、オリンピックなんてやって大丈夫ですか。

バス旅行

2016年4月8日、金曜、晴れ。◉近々会社の日帰り行楽がある。案内メールに、行く先は南京牛首山だとある。ナンキンウシクビヤマ…。応召で中国にいた頃の金田一耕助が訪れそうな地名だ。纏足を嵌められた“くだん”の少女が、荒れ屋敷に幽閉されている。◉ただ興味はあるが今回は不参加にした。じつは今年の予算計画で福利厚生活動の中止を進言したのだ。我が社は危急存亡の瀬戸際である。そんな余裕は無い。物見遊山に浮かれておる場合ではないぞ。休みに大勢集まるなら、皆で近隣のドブさらいでもして金を稼ごう。◉身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれじゃ。どうじゃ、王よ、陳よ、儂は間違うておるか!しかし提案は総スカンを喰らい「たとえ会社が潰れても、レクリエーションは必要です!」という事で、今年も恒例『春のバス旅行』が実施の運びとなりました。◉本来はバスの車窓から流れる景色を眺めるのが好きだ。今週の清明節休み、市バスで漁港(という終点があるのだ)に行ってみる事にした。きっと太湖の畔りに行くんでしょう。案内では停留所がやたら多いから、1.2元で一時間くらい暇がつぶせるだろう。◉一番前の席に座り、音楽を大音量(クラクションを鳴らし続けるので)で聞きながら、知らない街を行くのは楽しかった。終点はなぜか大きな団地だった。のんびりした午前中。団地の隅にバラックの店が並んでいる。その向うの空地に菜の花がたくさん咲いている。写真を撮った。

同僚(2)

2016年4月1日、金曜、晴れ。◉製品の試作が難航し、また日本からスタッフが来る。一月の案件のテストランが早くても初夏になる。呑みながらその事を話しているうちに、だんだん気分が荒んできた。日を追うごとに、障害の原因予想の選択肢だけが増えていく。◉それってどういう事なんだ?と問えば、相手は不具合のメカニズムを説明してくれる。が、得てして技術畑の人間は説明が下手で、聞いてるとイライラする。そのお話は、一般の方々にとっては、どこが異常か解んねえんだよ。◉相手に悪気がないのは分かっている。こっちも酒が入っている。中国の事情も了解している。それでも、落ち着いて煙草をくわえ、ケータイいじってるのを見ると、俺には怒りが生ずる。どっから来るんですか?その余裕。◉次第に脳がヒートアップする。そもそも訊ねなきゃ説明がない事が気にいらん。メールのCCだけじゃ情況は分からん。納期を引っ張るにも、それなりに理由(言い訳)がいる。俺は歩み寄っておるのだ。「じゃあ説明するけど」的スタンスは何なんだ。本音を言えば、何でもいいから、もっと早く原因気づけよ!◉気分を変えてハイボールを頼む。けどダメだ、無理だわ。もう憤懣遣る方無いです。もしかしてあんたバカァ?恥知らずゥ?俺がクライアントだったら、とっくにもうお宅には頼まないって言ってるよ。店を出た所で、もう一軒行く?と誘ってくれたが断った。そ、そんなん行ぐがっボケッ!

アップデート

2016年3月22日、火曜、晴れ。◉出勤前にiPhoneのOSアップデートが終わらず、危機に陥る。正確に言えばアップデートは完了したが、最後に要求されるIDとパスワードをAppleのサーバが受け付けず、起動がストップする。『iPhoneを探す』を設定するため、みたいなエラー表示が出るが、余計なお世話だ。それは今手に持っている。◉サーバの不調か、部屋のWiFiが悪いのか、中国政府の陰謀か、原因は分からない。時間をおいてやり直すか、iTunesに繋いでリトライしろとサイトに出ている。ああ詰まらん事になった。◉日本人との連絡は個人ベースなので、コレが使えないと全く仕事にならん。予定も分からず、時刻も見られん。アドレス帳も中国語辞書も使えない。便利さが仇だ。データのバックアップはMacにあるが、この場合は意味がない。何がなんでも開通が必要だが、巡回バスが来るので続きは会社でやるしかない。◉起動が完了しない状態で、ネットに繋げているか不安なので、Macと電源コードも持って行く。カバンには入り切らず、別で手持ちする。席に着き次第Macを起動し、通訳嬢とIT担当を捕まえて無線LANに繋ぎ、iTunesを起動し、iPhoneを接続し、IDとパスを試す。ダメだ。同じ事言う。◉しかし何度も繰り返し、最終的にはアクティベートできた。解決の理由は不明だが、トラブルの原因はもちろん陰謀説が有力と考えている。