休筆

2017年6月25日、日曜、雨時々曇り。◉ここ数ヶ月、休日に一日中家にいる事が多い。やる気がせん。ブログを書くのも億劫だ。毎週四時間くらい費やしているが「やりました感」がない。人生の持ち時間も少なくなっているので、しばらく休みます。◉中国で精神を正常に保つために始めたブログだ。中国の何が嫌だったかと言えば、今思い返せば食い物が滅茶マズイ(個人の感想です)のが70%くらいである。逆に言えば海外赴任では食い物が合えば、もうかなりOKなのだ。タイ王国では、地元民の食う店で食事しても、どこでも美味かった。あっちの方が断然良かった。◉次に娯楽が無い(これも個人の感想です)という事になるが、特にテレビはつまらない。本屋図書館もつまらない。映画はかなり立派な作品があるが、中国語でわかりにくい。ただ今にして思えば、実はあれが娯楽だったのではないかと考えるものがあって、それは「消費」である。それも娯楽のメインとして。◉アリババが馬鹿みたいに膨張するのは、お買い物行為自体が実は最大の娯楽だからだと思う。似たり寄ったりのショッピングモールが、無数にできるのも同じ理由だ。買う事が楽しいのだ。でも僕が欲しいと思うものは、中国全土に何一つなかった。◉明け方、何だか夢見が悪くて焦って起きる時がある。目覚めて「安心しろ僕は今日本に居る、ここは中国ではない」と自分に言い聞かせる。残業時間が極端に増えたが日本は良い。

映画(11)『グレートレース』

2017年6月18日、日曜、曇り。◉BS録画。『グレートレース』は40年以上前に『チキ・チキ・バン・バン』と二本立てで、中日シネラマで見た。いずれも二時間半を越す大作のコメディ映画で、どちらも休憩が挟まる。今ではそんな興行は考えられない。◉当時、黒尽くめの間抜けな悪玉、フェイト教授とその助手マックス、及び彼らが発明する変なメカがお気に入りだった。今回のNHKの放送では、ちゃんと開始前の序曲が付いていた。終わってからは退場曲もあり、つまりは大作の証拠である。◉かつて日曜洋画劇場で二週に分けて放送した時、淀川長治さんが「ヘンリー・マンシーニの音楽の調子の良いことったら無いですねぇ」と解説したけど、その通りだと思います。僕は今でもサウンドトラックレコードを持っている。◉で僕は、その日曜洋画劇場放送の日本語吹き替え版を、テレビのイヤホン端子からソニーのラジカセ(マイクインマチック1500)でカセットテープに録音した。高校から大学にかけて、それを何回聞いたかわからない。家庭用ビデオ録画機が普及する前、自分が好きな映画を所有する手段としてはかなり有効だった。ただしテレビに張り付いてマメに録音操作しないとCMがカットできない。◉広川太一郎トニー・カーチス)、ジャック・レモン愛川欽也)、ナタリー・ウッド小原乃梨子)、ピーター・フォーク穂積隆信)という豪華な声優陣で、吹き替えも見事であった。

採用

2017年6月11日、日曜、曇りのち晴れ。◉木曜に、内々定を出した学生の一人が、就職承諾書を返送してくれたあとで辞退して来た。もっとも承諾書に法的な拘束力はない。断るのは自由である。某鉄道会社に決まったらしい。うーん僕でもそっち選ぶか。名古屋で勤めるなら、今後は名駅前企業がいいもんね。◉空前の売り手市場で、早々に内々定を出しても、大手と銀行系が採用をかけるとそっちに学生が流れてしまう。六月が山だろう。◉少しでも有利な企業に就職したい気持ちは分かる。けどお前ら、迷っても無駄。どっちにしても十年後はほとんどの仕事はAIとロボットがやるぞ。そして二十年後は多分、どんなん仕事も人間はいらんぞ。僕の予想ではいずれは、政治も経済も文化も宗教も全部機械にお願いする世の中になるのだ。◉最近、深夜に会社に電話をかけたり、遠くからオフィスに電気が点いているかを観察して、残業の実態を調べたりする学生がいるらしい。「会社説明会での話は嘘だったんですかっ?」ああ恐ろしい、ごめんなさい。二十四時間戦えますか?ってCMがあった国だもの、残業はほとんど国民性の一部です。ゼロにはならんぞ。◉仕事があるのは良い事なのだ。残業できる内が我が世の春、人類の黄金時代なのだ。遠からず「就職」という事自体が意味を失う時代が来る。だから今は僕が内々定って言ったら素直に受けといてください。僕がいる内は悪いようにはせんから。お願い。

キッチン

2017年6月6日、火曜、晴れ。◉いよいよキッチンを直す事になりそう。先週旭化成リフォームの営業さんと会った。その当日、会う前に電気炊飯器がダメになった。暗示的である。仕方なく三合炊きの小さい奴を買った。妻はもうすっかり全修理モードに入った。炊飯器の故障は彼女の陰謀かもしれない。◉水周りはガタがくるのが早い。中国にいる間に、トイレと風呂を修繕した。費用は、単身赴任手当を貯めて賄った。この点は中国と人民元に感謝している。助かりました。けど台所まではとても手が回らなかった。◉来年で築30年になる。レンジは二回取り替えたが、換気扇を当時のままで使い続けたのは、かなり長持ちさせたと言えるらしい。去年の秋に自力で洗浄した時は、油でネジが固まっていて大変だった。掃除して以来、ゴーゴーと騒音が大きくなった。◉旭化成が提案してきたのは、トクラスのシステムキッチンで、旧社名はヤマハリビングテックである。気づいてなかったが、今のキッチンは同社製である。じつは以前営業をかけた事があるが、仕事にならなかった。◉クリナップのオールステンレスも提案された。耐水性が魅力である。ゴキブリにも強そうだし。ともあれ、まずは費用を工面しなくてはならない。夏のボーナス(が出るものと仮定して)は当然全部消える。夕方、ラジオで南海トラフ地震の話を聞いた。マグニチュード9だと言う。今来ても不思議はないらしい。迷いが生じている。

本『細雪』

2017年5月28日、日曜、快晴。◉『細雪』(文庫上中下三巻)を読み終える。まず読みや易い。文体は全く抵抗なくスラスラ頭に入った。関西弁の会話がとてもリアル。漢字と仮名遣いが新しくなっているのが助かった。文字も大きい。若い頃買った早川ノベルスなんか今はとても読めない。◉一月で読めたのだから、たぶん面白かったんだと思う。大阪にお金持ち(没落したとは言え)の美人四人姉妹がいて、上の二人は嫁いだが、三女は陰気で見合いに失敗し、四女は勝手気儘でスキャンダルが多く、両方とも片付かないので困っている。という話。◉第二世界大戦末の初老の作家の作品。ディティールの集積が凄い。着物の事とか芸事とかとにかく細かい。特に中心となる次女(幸子)の心の内の記述が、いかにも女らしく感じられる。また実際の店や製品もどんどん書く。スティーブン・キングみたい。◉面白いのは、沢山の病気が出てくる事。黄疸、中耳炎、猩紅熱、赤痢。わずか数年のお話で、登場人物にそんなに罹患させたら、今じゃ返って嘘っぽい。けど、昔はよく病気したらしい。何人も兄弟がいた戦前の家では、大抵一人くらいは幼いうちに病気で死ぬ子がいた。◉漫才師の花菱アチャコは中耳炎で死にかけたと読んだ事がある。中耳炎は死に至る怖い病気だった。お袋はジフテリアに二度かかり、二度目は医者に見放されたらしい。お婆ちゃんがすりおろした大蒜の汁を喉に垂らして助かったと聞いた。

家(2)メンテナンス

2017年5月20日、土曜、晴れ。◉午前中、台所の床を掃除する。東急ハンズで買った業務用洗剤を使う。床面シートは花崗岩の肌に似ていて、汚れが沈着しやすい。台所にこの素材を指定したのは失敗だった。落ちにくい所は歯ブラシで擦る。◉這い蹲って作業していくと、流し台の合板が劣化してビラビラしているのがわかる。洗い物をする立ち位置に床下収納庫の蓋があり、金属枠の周辺が汚れ易い。これも最近あんまり使わん。二時間ほど作業してワックスを引いて完成。◉午後、注文してあった蛍光灯をエディオンに取りに行く。「お店用ですね」と言われたが、実は僕の部屋用だ。ヤマギワの業務用照明で、150センチくらいの長さの蛍光管を使う。当時はかっこいいと思ったのだ。◉そういえば、家を建ててからこの蛍光灯を交換した記憶がない。三十年近くだが、そんなに保つものだろうか。松下電器はすでに生産を終了し、NECが辛うじて作っていた。照明のカバーを外すと、周囲のスポンジが全部硬化してボロボロと粉になって崩れる。それを掃除機で吸う。配線を固定するプラスチック留め具は、ベビースターラーメンみたいに折れてしまった。◉垂れ下がる配線は、幅広の梱包テープで天井側に貼り付けた。もう適当でいいや。どうせ次はLED照明に変更しなきゃならんだろう。蛍光灯はきっちり点いた。めちゃめちゃ明るい。青白い光で落ち着かない。三十年前のコンビニエンスストアみたい。

映画(10)『鳥』

2017年5月13日、土曜、雨。◉録画、ヒッチコックの『鳥』を見る。タイトルの直後、最初のカットで女性が画面右から左へ交差点を渡る。カメラが左へパンして女性を追う。左手から看板(みたいなもの)がフレームインして彼女は一瞬見えなくなる。看板が右に切れていくと女性はその左側から現れる。ペットショップ前の歩道だ。彼女はそのまま店に入っていく。◉思わず巻き戻して確認した。交差点は市街地ロケだ。しかしペットショップ前はスタジオセットだ。影が違うもん、絶対そーだ。ただ構図やパン速度、演技者の歩調が自然でちょっと気づかない。◉つまり看板(上下いっぱいに映る)を利用して、ワンショットのように合成で繋いだのだ。看板の右か左が合成の繋ぎ目のはずだが全然分からない。ただそう考えないと、開巻早々看板が画面を分断する理由がないです。◉視覚的インパクトが第一の映画だが、歳を経てから見ると、主人公の男女、男の母親、小学校の女教師、四人の関係描写に惹かれる。母親のキャラは極めて現代的。とくに、寂れたボデガ湾で美貌を窶していった先生(スザンヌ・プレシェット)に大いに感情移入する。◉そのほか。農夫の家から逃げ去るトラックの立てる猛烈な砂埃、一刻も早くここを抜け出したい気持ちの表現。高空から捉えたボデガ湾のショット。CG以前どこにカメラをセットしたのか。夥しい数の鳥が待つロングショット、雲間から挿す光、この世の終わり。